〜前回のあらすじ〜
マリアはもう「二番目の王女」ではなかった。クスコにとっての「一番の王女」なのだ。
それを自覚してとても幸せだった。そして…。
6.
ドアがいきなり、勢いよく開いた。
「父上!!」
入ってきたのは、銀髪の美少年王子である 。
「どうして姫が父上の部屋にいるんだ!?ずるいぞ!」
「お前、人の部屋に入る時はもう少し礼」
「姫!」
聞いていない。
セルジオは慌ててマリアに駆け寄り、涙のあとを見つけた。
「姫、どうした?父上は何を言ったんだ?いじめられたのか?父上!姫に何をしたんだ!?」
「お前、質問は1つずつにしてくれよ」
「うるさいっ!父上、姫が泣いてたのはどういうわけだ!」
セルジオの手は、はや腰の剣にかかっている。
「セルジオ様、待って下さい。お義父様は私に親切にして下さったのですわ。私、嬉しくて泣いたんですのよ。本当です」
「本当か?こんな父上をかばうことないぞ」
「本当です」
「…しかし、私も信用がないなァ…セルジオ、お前は父がそんなひどいことを可愛いマリアにするとでも思ってるのか?」
「マリアとは何だ!僕より先に呼び捨てにして!─ 父上、勝負だ!」
「セルジオ様」
本気で怒っているセルジオに、マリアは立ち上がって横から軽く抱きついた。
「おやめ下さいませ。マリアは悲しゅうございますわ」
いたずらな猫のような瞳で見つめる。セルジオは頬を染め、しぶしぶ剣から手を離した。
「お前、マリアが相手だと素直だな」
メルメ1世は妙に感心する。
「だから、マリアと呼ぶなってば!」
「セルジオ様もそう呼んで下さればよろしいのに」
「…」
「私は、セルジオ様の妃なのでしょう?」
「…」
「照れるなー、がんばれー」
小さな声で父が応援する。─ 少しずつ離れながら。
「…ま、まりあ」
「はい」
マリアはにっこりと笑った。
「セルジオ様、大好きですわ」
抱きついているのをいいことに、セルジオの頬に軽くキスしてみたりする。
「あのね、セルジオ様。私、この国でとても幸せになれそうな気がしますのよ。アイルーイのお父様やお母様は、きっとあちらでうまくやりますわ。心配してません。だって、私がクスコに来て、こんなに幸せなんですもの」
「??????」
「要するに、私、もうアイルーイのことはどうでもいいんですの!」
「そ、そうなのか?母君は?可哀想じゃなかったのか?」
「お母様は、お里に帰ってしまいましたから平気です」
「えぇ!?」
これにはメルメ1世も驚いた。
「今、何と」
「ですから、お里に帰ってしまったんです。私なしで王宮にいるのは好きではないようですわ。昨夜までは可哀想だと思ってましたけれど、今は平気です」
「…」
ぱっきりとマリアは言って、笑った。自分が幸せになれそうな場所を見つけたのだから、過去のものはもうどうでもよかったのだ。言ってはいけないことだったかしら?と思わなくもなかったが、もう言ってしまったから仕方がない。
「さ、ではまいりましょ、セルジオ様」
「どこへ?」
「歴史のお勉強。どうやら、そこから始めるのがよさそうですわ」
「いや、僕は今それをすませてきたところなんだが。これから馬術が」
「今日だけ。ね、お願いしますわ」
「…」
「行っておいで、セルジオ。今日はマリアの好きにさせてあげなさい。明日からは、いつもの時間に一緒に勉強するといい」
メルメ1世は穏やかに笑っている。味方を得たマリアは、セルジオの腕をとった。
「マリアがそう言うなら…。父上、行ってきます」
マリアと顔を合わせて何となくぎこちなくセルジオは笑うと、父王に一礼した。マリアも礼をし、2人は腕を組んだままメルメ1世の部屋を出ていく。
あとに残ったメルメ1世は、小さく幸せな溜息をついた。
─ 第二の王女 ル・マリア・アイルーイ 〜The Second Best 〜 End ─
あとがき。
今回は2番目の王女、マリアでした。この人は私にしては珍しく、「書きながら好きになっていった人」です。いつもは「好きでも嫌いでもない」か「好き」なんですが。
もともと、大学の授業中(笑)に描いたラフスケッチに、「何か消すのも勿体ないからエルメンリーアのお姉ちゃんにしよう。でも似てないから異母姉だな」と思って、ル・マリア・アイルーイって横に名前入れただけなんですけどね。いつのまにかこんなキャラになってしまいました。まあいいか。
ありがたいことに、BBSでは「パパ派」「息子派」に分かれて御贔屓を主張してもらえたりして、ほんと、嬉しかったです。書いてよかったー♪としみじみ思いましたね。
そうでなくとも感想をいただけたり、この話は前回のエリザベラより反響が多くて嬉しかったです。もちろん、完結後の感想もお待ちしておりますよー♪24時間いつでもオッケー!
で、あえてBBSには書かなかったのですが、実は神崎はセルジオくん派です。か、可愛いから!彼を引いた時点でマリアは人生成功してる気がするぞっ。パパも好きですけどね。
そして更にばらすと、セルジオ&マリアカップルにはモデルがいます。
ツッコミがこなかったから、どなたにもバレてないかな?実在するカップルです。ヒントは古典文学。
お分かりになった方&分からないから教えて!という方はこっそり神崎まで(笑)。
では。これが終わったのでやっと2000hit記念小説がのっけられる(笑)。
パパ&ネーナカップルのお話です。そちらもお楽しみに!
そして、一転してダークな話になりますが、三番目の王女、ライラ─「破滅」もよろしくお願いします。
2000.11.3 神崎 瑠珠 拝
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