一年の約束 〜セルジオからマリアへ その8〜
大好きなマリアへ
少し暖かくなってきたような気がします。
マリアの方はどうですか?
「お休み」はマリアにとってすごくいいものだったようで、僕も嬉しいです。
それにしても、市場で物売りまでやったなんて…マリアは綺麗だから、きっと色んな人の目にとまったことでしょう。それだけは…少し、複雑な気分です。僕の勝手だけど。
同封されていた銅貨、確かに受け取りました。僕にとっても過ぎた価値のあるものであり、一生の宝物です。
ありがとう、マリア。
前回の手紙で書いた、「冬でも薔薇の咲くところ」に行ってきました。
…行ってきたんだけど…。
内緒の場所、とフェルディオーレが言っていたのはあまりいい意味じゃなくて…実は…。
ごめん、少し考えたけどあからさまに書くのは避けます。この手紙も、誰の目に触れるか分からないから。
それにしても、恐ろしかった。
これは僕の器量の問題なのかな?ここでフェルディオーレとティレックを断罪するべきなのかどうなのか。
その場所で人に会わなかったのが幸いでした(背後で物音がしたとき、本当に心臓が止まるかと思った。それはただの狐だったのだけれど)。
薔薇は綺麗でした。少なくとも、それは確かだったのだけれど。
…だけど。
もう少し、考えてみます。こういった裁判を僕がすることになったら、どういう判断を下さないといけないんだろう。
僕は、父上から「少しは融通をきかせた方がいい」と言われたことがよくあります。
自分ではそんなに真面目一辺倒だと思っていたつもりはないんだけど。
器量がないのかな。
…ごめんね、あまり楽しい報告にならなくて。
ああ、そうだ。話が前後するけど、どうして僕の木彫りの練習板なんてまだ残ってるんだ…?
恥ずかしいなあ、もう。
そういえば最近、木彫りをやっていないことに気がつきました。大問題だ。
帰ったら怒られてしまう。少しやらないとね。
思い出させてくれてありがとう。
では。春がきたら、夏も秋もすぐだね。楽しみにしています。
国境の砦にて、少し考え事をしている セルジオ