一年の約束 〜セルジオからマリアへ その12

 

 

 大好きなマリアへ


 マリアがこれを読むころには、僕はもう国境の砦にはいないはずです。ちゃんと、マリアのところに向かっています。
 やっとマリアに会えます。
 この1年、自分なりに頑張って少しは成長したつもりだけど…。マリアの目にはどう映るのかな。全然変わっていないと言われたら嫌だなあ。
 僕は、この1年さしたる病気もせずに元気でいました。本当です。
 マリアの方は、風邪をひいたことを僕に黙ってたんだね。駄目だよ、きちんと教えてくれなければ。そりゃ、教えてくれたからって何が出来るわけでもないけど、マリアのことは知っておきたいからね。

 

 長かったけれど、あっという間に過ぎた1年だった気がします。
 ハイトさんたちには本当によくしてもらった。とても感謝しています。
 ここにこなかったら知らなかったことが沢山あった。
 …口惜しいけど、父上の読みは当たっていたってことです。
 僕には兄弟がいないから、ティレックやシードルのような兄を持てたことも嬉しかったし、フェルディオーレのような妹の面倒をみる(というと彼女は怒るだろうけど)ことも新鮮だった。
 ハイトさんもシュレインも、僕のことを実の息子のように可愛がってくれたし。
 僕は、何かにつけて恵まれていることが分かりました。
 その中には勿論、マリアのような妃をもらえたことも含まれるよ。
 あ、僕が帰ったからと言って代わりに父上を行かせたりはしません。
 僕が、今度はマリアも一緒に連れて行くことはあるかもしれないけどね。
 ハイトさんは、今僕が居るこの部屋はそのままにしておいてくれると言いました。
 いつでも遊びに来ていいそうです。
 なので、今度は是非。マリアも一緒に連れてきて、ここからの景色を一緒に見たいです。

 

 これを書いているのは、砦での最後の夜です。
 階下では僕の送別会と称した宴会が、まだまだ行われているようです。
 僕は明日からのことを考えて、そんなに飲みもせずに早々に引き上げさせてもらいました。
 この部屋とも、名残を惜しみたかったし。少し、ゆっくりと考え事をしたくもあったので。
 …本当に、こことの生活ともお別れなんだなあ。
 そして、1ヶ月後にはマリアに会える。
 ここの生活はとても楽しかったけど、でも。
 やはり、僕にはマリアが必要なんだということがよく分かりました。
 今でも大事にしているつもりだけど…帰ったら、もっと大事にしようと思います。

 

 では。

 
 

国境の砦 最後の夜 セルジオ