一年の約束 〜マリアからセルジオへ その9〜

 

 

 私の大事なセルジオ様へ


 御機嫌いかがですか、セルジオ様?
 セステアはもうすっかり春です。お茶の時間はサンルームの窓を開けているので、日に日に緑が増えてゆくのが良く分かります。
 お父様は遠乗りがしたくて仕方ないみたいですわ。でも、残念ながらそんな暇は取れないようなのですけれど。
 以前セルジオ様が何度か、私を一緒に馬に乗せて下さったことを思い出します。
 あの時はあの時で気分のよいものでしたが、一人で遠乗りというのはまた違ったものなのでしょうね。
 私も、乗馬に挑戦してみると言うのは如何でしょうか?

 

 「冬でも薔薇の咲くところ」。
 ぼかして書いてらしたので良く分からなかったのですが、何か…行ってはいけない場所でしたのね。
 そのことについては深く触れないでおいて、とりあえず私の思ったことを書きます。
 セルジオ様に器量がないとは思いませんわ。確かに真面目でいらっしゃるし、一度決めたら押し通す意志の強さはあると思いますけれど。
 結果はどちらが正しいとも正しくないとも、言い切れないと思います。断罪(というのは実に穏やかでない言葉ですわね)なさるにしろなさらないにしろ、セルジオ様はともかくお悩みになったのですから。
 そのことが一番重要なのではないでしょうか。
 そういうことを繰り返して、名君になってゆかれるのだと思います。
 そして、マリアは少しでもその助けになれるように、悩みを分けていただくに足る王妃になる為に、頑張らなくてはと思うのです。
 …なんだか上手く書けません…答えにもなってないような気もしますし。すみません。

 

 セルジオ様の木彫は、マリアが大事にとってあります。宝物ですわ。
 セステアに来て初めての誕生日にセルジオ様から貰った木彫も、勿論もちろん、一生の宝物です。
 どれだけの財宝を積まれても、誰にも渡せませんわ。
 誕生日、で思い出しましたが、今日お父様から「今年の誕生日は何がしたい?」と聞かれました。
 「何が欲しい?」ではなく。
 一寸びっくりしましたが、すぐに思いつきました。責任をもって叶えていただこうと思います。
 勿論、一番したいこと、はまだ叶えられないのですけれど。

 

 では。今度のおたよりは、少しだけ大人になった(はずの)王太子妃がお届けする予定です。

 

我儘を考えている王太子妃 マリア