一年の約束 〜マリアからセルジオへ その8〜

 

 

 最愛のセルジオ様へ


 春が来ました!
 お城でも城下街でも、花が咲いてきています。
 とても嬉しいです。
 庭師が、「春に花が綺麗に咲くのは、冬の寒さを我慢したからです」と教えてくれました。
 …ということは、今セルジオ様に会えないつらさを我慢したら、私は少しは綺麗になれるのでしょうか。
 なんて思ったりして…。でもそうだと嬉しいですわ。

 

 勿論、私もセルジオ様とこれ以上離れているのは嫌ですわ。3年だなんて!絶対に待てません。
 サッカルー侯爵様には申し訳ないですが、それ以上セルジオ様は渡せませんわ。
 もし、どうしてもとおっしゃるなら、その時はマリアが国境まで出向いて、サッカルー侯爵様に思いきり舌を出してから、セルジオ様を攫ってすたすたとセステアまで帰ります。
 そのようにお伝え下さいませ。

 
 冬の薔薇はいかがでした?
 フェルディオーレさんと一緒にゆかれたのですね。
 正直、少し羨ましいです…。
 セルジオ様と2人で綺麗なものが見られるなんて…。あんまりですわ。
 お帰りになったら、マリアとも一緒に色んなものを見て下さいませね。
 …ああ、でも冬の薔薇なんて、セステアにはないですわね…。やっぱり、羨ましいです。子供っぽいですけれど。
 この間のお休みで少しは大人になった気分でいましたのに、やっぱりちょっとしたことでまだ子供っぽい自分を発見してしまいます。
 精進しなければと思うのですが、やっぱり、ことセルジオ様のこととなると駄目ですわね。
 全く、困ったものです。
 そう言えば、お父様に「セルジオ様は冬の薔薇を見に行かれるそうですわ」と言ったら、
 「冬の薔薇?ハイトのところに行って、何やってるんだ?予想外の方向に成長して帰ってきそうだな。危なっかしい」
 と仰ってました。予想外の方向って、なんなのでしょうね?

 
 ともあれ、セステアももうすぐ一年のうちで一番綺麗な季節です。
 お帰りになる日が近づいているのが分かります。
 一つ、こういった気分の時に言う言葉を街で学んできました。
 なんだと思います?
 それはね、

 

「わーーーーーーーーーーーい!!!!」

 

 ですわ。
 なかなか、素敵ですわね?

 

すっかり街娘になった王太子妃 マリア