一年の約束 〜マリアからセルジオへ その6〜

 

 

 最愛のセルジオ様へ


 この手紙が着く頃には、セルジオ様びっくりなさってるかしら。
 ごめんなさい、前のお手紙でわざと言わなかったのです。お祖父様に、セルジオ様へのプレゼントを届けていただくようお願いしたこと。
 セルジオ様のびっくりなさっている顔を想像すると、一寸嬉しくなります。ごめんなさい。
 マントはお気に召していただけたでしょうか。少し実用的ではありますが、前にもっていらしたのはそろそろ小さくなる時分だと思いましたので。着られましたか?

 

 でも、私もびっくりしたんですのよ?
 どうしてセルジオ様は私の新年のドレスがお分かりになったのでしょう?そのこと、手紙には書きませんでしたわよね?
 セルジオ様がお書きになったような、ローズ色のドレスを着てクスコの民衆に挨拶いたしましたわ、私。
バルコニーに立つにしろ、ずうっと向こうまで人はいますから、少しでも目立つ色がいいと思ったのですけれど。本当に、どうしてお分かりになったのでしょうか。不思議です。

 

 そしてね、セルジオ様。
 お母様の仰ったことがどういうことか分かるようになるために、私、1日お休みをいただこうと思いますの。
 何もしない日、ですわ。
 お父様にお話したら、面白がっていらっしゃいました。
 「お休みだって?別に構わないよ。王太子妃にもお休みがなくっちゃあね。で、どうやって過ごすんだい?」
 勿論、内緒です。
 お休みの日がどうだったかは、今度のお手紙に書きますわね。
 楽しみです。

 

 最近歴史のお勉強のことをお手紙に書いていないような気がします。
 怠けているわけではありません、勿論。
 セルジオ様が帰ってきた時にまとめてお話できるように、ちゃんと整理してあるのです。
 歴史ですから、素敵なこともおぞましいことも沢山あります。
 私はその両方を、なるべくセルジオ様と分け合って、クスコを治めていきたいです。
 なんだかんだ言って、お帰りになった時に話すことが溜まる一方です。
 困ったものです。
 セルジオ様のお誕生日も過ぎましたから、あとは春を待つばかり。
 季節が変われば、セルジオ様にお会い出来る日も近づきますわね。
 楽しみにしつつ、マリアは1日だけお休みをいただきます。

 

王太子妃1日お休み予定 マリア