一年の約束 〜マリアからセルジオへ その3〜
大好きなセルジオ様へ
やっと2ヶ月です。如何お過ごしですか、セルジオ様?
セステアは本格的に寒くなって参りました。夜など、もう厚めの夜具をかけないと、風邪をひいてしまいそうです。
セルジオ様の砦は、寒くはないのですか?
お父様が私を苛めるだなんて、そんな。とんでもないですわ。本当によくして下さっています。
私が淋しがらないように色々、細々と気を遣って下さっているのがよく分かるのです。本当ですのよ。
お茶の時間も、出来る限りゆっくりとるようにして下さいます。
そうそう、今日のお茶菓子は可愛らしい馬の形をした砂糖菓子でした。セルジオ様がご覧になったらさぞ喜ばれるだろうと思いました。
そちらではお茶の時間はとっていらっしゃるのですか?
お茶の時、お父様がセルジオ様が御自分の馬を可愛がっているかどうか、心配してらっしゃいました。
…そんな心配、要りませんわよね?セルジオ様はこちらにいらしたときから、大層あの子を可愛がってらしたんですもの。
…と私は思うのですが、お父様が何ておっしゃったと思います?
「ハイトに喰われないようにちゃんと守れてるかなってことだよ」
ですって!
私はますます分からなくなりました。サッカルー公爵様ってどんな方なのかしら…。
もう、実際お会いしないことにはどうやっても分からないような気がします。
私の想像力も貧困ですわね。
ティレック様とシードル様との遠乗り、楽しそうですわね。
私もお連れいただきたかったです。
フェルディオーレさんは一緒に行かなかったのですか?
あ、でも楽しいばかりではなくて、色々考えられたことがあったようですわね。
レストカは、今の私には「サゼスの歴史について調べていると必ず出てくる国」という認識です。
アイルーイに居た頃は、聖域を挟んでいる国ということもあって交流もなく、どんな人がいるのかということも、考えたことがありませんでしたもの。
セルジオ様の妃たる者がこれではいけませんわね。
歴史を勉強する傍ら、現在のレストカについてもちゃんと知っておこうと思います。
クスコについてももっとよく知らなくては。
そう思って、最近よく城下町に行きます。
セルジオ様の妃だということで、皆様よくして下さいますので、とても嬉しいんですの。
商業も活発です。
私のお祖父様が商人で(この話はしておりましたわよね?)、クスコと貿易がしたいという手紙が前にきておりましたので、「どうぞいらっしゃいませ」とお返事するつもりでいます。
マリアも小さな外交をするようになりました。王妃への第一歩です。
あと10ヶ月ですわね。
まだまだ半分以上残っているのかと思うとそれはそれで気が滅入るのですけれど、でもなるべく愚痴を言わないように、前向きに頑張っていこうと思っています。
セルジオ様と一緒にお茶を飲んだり、城下町に出かけたり出来る日を本当に楽しみに待っています。
心からのキスをこめて マリア